BayWaveトップ > 人間探訪

ちばの人間探訪

「いのちの大切さ」

(左画像)
 助産師 川島広江さん

女性の健康支援をライフワークに―

助産師は「いのち」の誕生という神秘的でパワフルな場面に立ち会う仕事である。出産のエキスパートとしての認知度はあっても、女性の健康に関する専門家であることはあまり知られていない。川島さんは、受胎調節実地指導員、上級思春期保健相談員、更年期健康相談員、マンスリービクス認定指導員、PHA(プロフェッショナルハーブアドバイザー)という複眼的視点から女性の健康支援活動を行うとともに小中高生や大人へのセクシュアリティー講座(性教育)を行っている。

助産師は女性の健康の専門家―

聞いて驚いた。薬の動物実験は一般にオスのラットが使われるという。ホルモンバランスの関係上実験には不向きとの理由でメスは使われない。ところでオスのみの動物実験を経た薬が女性にも投与される。これは男性主体の医療が性差の考慮なしに女性に適用されてきたことを物語る。医療現場で女性特有の症状が見落とされたり、女性の心理的な問題が理解されない等の悲劇は後を絶たない。では女性主体の医療や健康の情報はどこに求めたらいいのだろう。
「ぜひ助産師も活用して」と川島さんは語る。妊娠・出産という女性ならではの機能を最大限に発揮できるよう援助し見守る助産師は、女性の健康をトータルにケアする専門家。妊娠出産をはじめ、母乳育児、小さい子どもの性教育、不妊症、更年期、老年期と、生涯にわたる女性の健康支援が川島さんのライフワークだ。

なぜ今性教育か―

低年齢での性行動、エイズ等の性感染症、望まない妊娠、人工妊娠中絶、児童虐待、性暴力、これら全て日本は増加している。さらに川島さんが危機感を覚えるのは今の日本のこどもの自己肯定感の低さだ。自己肯定感の低さは早期の性行動と暴力に結びつくという多くの研究結果から、助産師ならではの“性と生”を伝えたいと願う。性教育を受けた子ども達からは「性はいい加減な気持ちではいけない」「命の大切さが本当の意味でわかった」「子どもは一生懸命育てなければならない」等の感想が寄せられ真摯に受け止められていることがわかる。また要請してくれる教師や保護者には感性豊かな方が多く、真剣に子どもを護ろうとする気持ちが伝わってきて励まされるという。本当に性を学ばなければならないのは子どもよりもむしろ粗悪な情報で子どもを振り回したり性教育の権利を奪う大人ではないだろうか。子育て中の大人向けの性教育講座で講師を務める川島さんには、何かに突き動かされるような使命感と迫力が感じられる。

更年期について―

先月女性センターで更年期に関する講座を担当した。年齢的なもの、との理由で「過ぎるのを我慢して待つ」ものとされてきた更年期症状。だがそこに病気が潜んでいる可能性がある。検診・受診の必要性を川島さんは訴える。さらに医療との付き合い方として、選択の重要性を強調。西洋医学と東洋医学、セカンドオピニオン等々、数ある見解のなかから自分で主体的に選ぶ姿勢は、精神的な自由と自信につながるという。家族の健康を気遣うことに忙しく自分の健康が後回しになる女性も多い。自分に向き合い自分を愛しましょう、との川島さんの言葉に涙ぐむ女性の姿もあった。川島さんの発する言葉ひとつひとつに女性としての仲間意識とあたたかみが感じられる。今後のさらなる活躍に期待したい。



*DATA*

問合せ/川島助産院(出張専門)
 TEL 043-236-6231
 千葉市助産師会


(2005年6月)


前のページ
食育の大切さ
コンテンツのトップ 次のページ
がんと向き合う

このレポートの口コミ

口コミを募集してます

コメントを投稿するにはユーザ登録が必要です