BayWaveトップ > 人間探訪

ちばの人間探訪

「人生で最初の眼鏡だからこそ」

(左画像)
 有限会社パセリ 代表取締役 外川久夫さん

「最初に出逢う眼鏡は大切です。」と有限会社パセリ代表の外川久夫氏は力説する。力説というよりも魂を込めて語りかけてくださる、といったほうがふさわしいかもしれない。
読者の皆さんは、千葉駅北口の静かな環境にある小児用眼鏡専門店「パセリ」をご存知ですか?見ているだけでも楽しくなるようなかわいらしいフレームのディスプレイ。生後6ヶ月の赤ちゃん用の眼鏡もある。鼻がまだ小さい赤ちゃん用には鼻の当たる部分に特別の趣向が凝らされている。そして、それを手にとる外川さんの仕草のなんと優しいこと。

子どもの眼鏡をめぐる事情―

外川さんが子ども用眼鏡の専門店を作ったのには強い思いがありました。眼鏡技師として大手百貨店眼鏡部、眼科勤務を経るなかで、子どもの眼鏡事情に大きな問題があることを知り、いてもたってもいられない気持ちになったのです。
小児眼科においては良好な視機能を6歳までに確立することが重要だと言われています。斜視や弱視の治療でも、子どもの総合的な発達という点においても、眼鏡による矯正の必要性はいわば常識になっています。平成2年から行政指導のもと3歳児眼科検診が実施されるようになり、早期に視力の異常が発見されるようになりました。過去には不幸にして弱視となってしまったような例も、眼鏡による矯正により視機能に問題なく生活できるようになりました。
ところが残念なことに、子どもが安心して快適に装用できる眼鏡が手に入りにくく、価格的にも負担を強いられてしまう等の現実がありました。それが子どもの視機能回復の大きな壁になっていたのです。

子ども達に快適な眼鏡を―

異常を早期発見して矯正治療できれば良い結果がでることはわかっているのに、必要な眼鏡が入手できないという悲しい現実。需要が少ないために製造ラインから切り捨てられてしまうこと、真剣に取り扱う販売店の数があまりに少ない等、業界としての対応の遅れを感じざるを得ない状況でした。なんとか子ども達に快適な眼鏡を提供できないだろうか、小さい頃に出逢った眼鏡のお陰で一人でも多くの方が勉強や仕事に打込むことができるように、そしてその方の幸せな人生のために、なんとかお手伝いをできないだろうか、という思いが日に日に強まっていきました。同時に小児の患者さんを受け入れている医療機関からの強い要望もありました。こうして「パセリ」が誕生したのです。

子どもには丁寧な言葉で―

「パセリ」の店内は洗練された大人の雰囲気が感じられます。子ども向けの眼鏡店からイメージされるカラフルでにぎやかな情景とはちょっと違いました。そこにも外川さんのポリシーが光ります。子どもだからといって店内を原色で彩るようなことはあえてしない。きちんとしたお店では、お客様もきちんとしようという気持ちになる。それは子どもでも同じこと。接客もまた然り。子どもにもできるだけ丁寧な言葉を使うようにしている、といいます。子どもは何もわからないだろうというのは大きな間違いで、自分がきちんと一人前として扱われたということを子どもは敏感に感じるのです。そのような子どもの気持ちも配慮した上での店づくりだったそうです。
視能訓練士である憲子さんと、ご夫婦でお店に並ぶ。接客カウンターには親子がゆっくりと座れる大きな椅子が設置され、子ども達はリラックスしながらもここではきちんとしましょう、ということを自然に理解していくという。

これからも中抜きで(笑)―

「うちは中抜きなんです」と外川氏は笑う。20代、30代をターゲットにした眼鏡店はたくさんあり、これからも増えていくだろう。しかし、眼科医との連携を密にしなければならない小さい子どもや、体の変調が多いシニア世代の眼鏡に真剣に取り組む店はまだまだ少ない。人生最初に出逢う眼鏡が大切だということ、眼鏡が人生に大きな影響を与えることをもっと真剣に伝えていきたい。だからパセリは「中抜き」でありたい。そう語る外川氏の柔らかな表情が印象的でした。




(2004年11月)


前のページ
全国制覇を目標に
コンテンツのトップ 次のページ
目には見えない大きな存在

このレポートの口コミ

口コミを募集してます

コメントを投稿するにはユーザ登録が必要です