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ちばの人間探訪

「精神科医療の今」

(左画像)
 中村古峡記念病院 院長 泉水正幸さん

中村古峡記念病院(精神科)の泉水院長が医学への道を志した頃から現在に至る約30年の間に、精神科医療は大きな変貌を遂げた。院長に就任して3年目の泉水院長に、精神科医療に寄せる思い、今後の展望について語っていただいた。

主治医制の持つ意味―

中村古峡記念病院では、外来・入院を通じて一人の患者様に対し一人の医師が付く主治医制を採っている。一対一のコミュニケーションを重視しながら治療を行うのだという。どの医療分野にもあてはまることである。特に精神科の領域では医師と患者様のよりよいコミュニケーションなくしては治療の効果も生まれにくい。担当医が変わることにより患者様の気持ちが不安定になり病状が悪化するケースも見てきた。また患者様をとりまく人々との関係性も重要だ。患者様の家族とのコミュニケーションも病気の治療において重要な要素といえる。

理学療法の重み―

積極的に理学療法を行っていることも中村古峡記念病院の特徴として挙げられる。「精神科」と「理学療法」、その関連について泉水院長はこう語る。患者様の中には長期入院の方もおり、入院中の加齢によりだんだん動けなくなってしまう場合がある。そしてそのまま寝たきりになってしまうケースも少なくない。病気や加齢による身体的・精神的な変化が日常生活を送る上で必要となる動作(起きる、立ち上がる、歩く)などの能力を低下させてしまう。その結果、疲れやすく動くのがおっくうになり、体力が落ちてしまう。体力が落ちた結果、また動きたくなくなる、という悪循環に陥ってしまうのだ。この度、新理学療法室が完成した。今後より積極的な理学療法を行っていく予定。
また併設の介護老人保健施設「うらら」においては、施設長でもある中村周二理事長の意向で、パワーリハビリテーションのトレーニングマシンを設置。悪循環によって眠ってしまった神経や筋肉に刺激を与えることにより、再び効率のいい動作を獲得することを目指している。動くのが楽になると、「部屋から出てみよう」「外に出てみよう」などと精神面にも大きな変化を与えるのだそうだ。身体と心は密接に関連する、という泉水院長の医療姿勢がよく表れている。

これからの精神科医療は―

この30年で精神科の病気自体も少しずつ変化し、治療法も病院の形態も大きく変わっている。以前は「精神病」への治療法が今ほど確立していなかったこともあり、患者様を隔離し、陽性症状を押さえるという色彩が強かった。しかし、薬物療法などがめまぐるしく進展した現在は、社会とのかかわりをもちつつ、患者様自身も治療について納得した上で薬を飲むことにより、症状が軽くなるケースが多くなったという。それにともない「精神病」への偏見や、精神科に対する敷居の高さも緩和しつつあると思われる。これからの精神科医療の方向性は、病床数を減らし、グループホームや訪問看護などを利用しながら、社会との密接なかかわりのなかでの医療になって行くものと考えられる。

おちついた人柄―

もし自分や自分の大切な人が精神を患ったとき、どんな医師に診て欲しいと思うだろうか。泉水院長は、「院長」という肩書きから予想した人物とはちょっと違った。落ち着いてかみしめるように相手の話を聞き、おだやかに話す方だという印象を受けた。患者様との一対一のコミュニケーションを第一に考え、心と身体の関連を大切に考えている院長の人柄が、精神科医療を変革してきたのではないだろうか。
病気を単なる病気としてとらえるのではなく、患者様自身のこころとからだ全体からとらえようとする泉水院長の姿勢が今後精神科医療にもたらす影響はきっと計り知れないのだろう。




(2004年10月)


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