ちばの人間探訪
「白いウルフ健在 気迫の指導!」
(左画像)
財団法人日本相撲協会 審判委員
阿武松(おおのまつ)部屋
阿武松 広生親方(元益荒雄)
相撲というと、実は“デブの力くらべ”位に思っていた。おまけに、力士は両国にしかいないと思いこんでいたが、習志野市鷺沼に阿武松部屋があると聞いて、今回取材にお邪魔させてもらうことになった。
稽古場に入ると、まず熱気に圧倒される。しばらくすると息苦しくなった。土俵ひとつで大勢の力士が稽古をしているからだ。ピリピリとした緊張に、知らずとこちらも目がつりあがってしまう。ガチンコという言葉は、真剣勝負を意味する相撲界の隠語で、稽古場で力士が激しくぶつかり合う時、「ガチン!」という音がするところから来ているという。その「ガチン」と「せいや!」という気合の入った声が響く稽古場は、まさに真剣勝負の場。鍛え抜かれた分厚い体は、思ったよりも素早い。気をぬけば、吹っ飛んでしまう。稽古では、その力士が何を考えてるか、人生まで出てしまうという。相撲の指導は元より、自分の人生において何かつかんで欲しいと語る親方は、いじめに合い、引きこもりをしていた少年が扉を叩いた時も、弟子として真剣に向き合った。どんな厳しい状況でも、決してあきらめないで、食らいつく。“白いウルフ”と異名を取った現役時代そのままに、今も後進の指導に当たる。
相撲には、国技や儀礼的要素もあり、何かと硬いイメージがつきまとうが、阿武松親方の考えは、進歩的だ。元来、ジムトレーニングでついた筋肉は、相撲に向かないとつれてきたが、効果的なトレーニング方法で、怪我のしにくい強靭な肉体を目指す。毎週土曜にキッズ阿武松という、子供向けの相撲教室も開いており、地域に貢献したい、相撲に親しんでもらいたいという親方の気持ちが伝わってくる。今回、何よりも楽しみだったのは、稽古後に頂くちゃんこ鍋。大鍋にグツグツと野菜や豚肉が煮込まれ、なんと力士が給仕してくれる。稽古後の親方の気さくな話しぶりに、一般の見学者も思わず“次の横綱の予想”を尋ねたりしながら、楽しくちゃんこを囲んだ。
テレビの普及で、一番しまったと思うことは、力士の迫力が薄れ、大相撲の魅力が損なわれたことではないだろうか。間近で見る力士達は、迫力もスピードも、テレビで観るのとは大違い。格闘技の中でも相撲が一番強いといわれる所以がわかった。ぜひ一度、足を運んでもらいたい場所である。
あなたも相撲ファンになること請け合いである。
*DATA*
http://www4.zero.ad.jp/onomatu/
(2007年6月)
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