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ちばの人間探訪

「盲導犬を連れて」

(左画像)
 マッサージ師 岩井 栄子さん (木更津市在住)

皆さんは、千葉県で盲導犬を見かけたことがあるだろうか。県内で活躍している盲導犬は現在約40頭、全国では約950頭。全国の約7800人の視覚に障害がある方々が盲導犬を希望してるのに対し、現在の訓練士の数や設備では、希望に応えるのはとても難しい状況にある。実は盲導犬協会などの盲導犬をユーザーに貸与している機関は、公的助成が少なく、毎年の収入の約95%は、寄付や募金によるもので運営されている。

木更津市在住の岩井栄子さん(69)は、3歳で全盲になった。高熱が長く続いたことの後遺症だったという。外出するには、ガイドヘルパーの介助が必要だったが、8年前に木更津市で初めて盲導犬リッキーのユーザーとなった。当時はまだ盲導犬は知られておらず、バスに乗車拒否をされたり、入店を断わられることもしばしば。そうすると、二、三度と足を運び、理解を求めたという。最近では入店拒否や乗車拒否されることもないというが、いまだ民間のマンション・アパート、学校や職場といった場所への受入れは十分ではない。現在は糖尿病による途中失明が多く、失職後、再就職の為に学校に通おうにも、施設が不十分だったり、盲導犬の立ち入りができない学校もあり、就職もままならないという。岩井さんは、理解を深めてもらうため、リッキーとずっと学校などで講演を行ってきた。「主人がリッキーをとても可愛がっていまして…」しかし最愛のご主人が今年2月に亡くなってしまい、リッキーはすっかり元気をなくし、呼んでも来なくなってしまった。火葬場でいつまでもご主人の匂いをかいで、鼻を動かしているリッキーを見て、引退を決意したという。リッキーは現在貰われた先で、のびのびと幸せに暮らしている。岩井さんから“見る”という表現が出たときハッとしたが、健常者は普段目で見ているが、実は匂いや手触り、経験など五感で“見て”いる。岩井さんはひとつ不自由なだけで、やはり“見て”いるのだと思った。今年9月に初めて2頭目のアトラスが講演会にお供した。マッサージ師の仕事は、盲導犬を連れている事を理解している方からの予約と、デイサービスセンターでの仕事。仕事に行く時などは、毛が落ちてはいけないと盲導犬に服を着せるという。盲導犬は色盲なので、信号の色はわからない。車の流れや人を見て判断している。駅の自動販売機や点字板の場所がわからず困ることも。「手伝いましょうか、と声を掛けてくださると助かります」と岩井さん。卓球が趣味で千葉にあるスポーツセンターによく行くそう。
10月10日は、目の愛護デー&マイメイト・デー。マイメイトとは視覚障害者とその目として働く盲導犬のこと。皆さんの理解と暖かい手が、一番の支援であると思う。




(2006年10月)


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